工具(チップ)の 寿命といわれても、何となくチップの交換をしているのではないでしょうか?
安定的な切削であれば、テーラーの法則により予想することが可能です。
言うまでもなく工具寿命は切削条件で決まります。
また安定的な切削が行われていれば、ほぼチップの逃げ面摩耗を調べれば大丈夫です。
ここでは切削条件と工具の関係を私の経験で得た知識をもとに解説いたします
- 旋盤歴22年(汎用、半NC、NC旋盤、C陣制御の複合加工機)
- 旋盤屋を経営
- 自動車、製鉄、航空機、工作機械、半導体などの単品仕事で営んでおります
- 加工の奥深さに日々精進
- 本ブログでは、私が勉強してインプット、アウトプット用に作成しています。細心の注意を払っておりますが、間違いがある場合があるのでよく確認してください。
チップの摩耗をみる
チップの摩耗の種類を解説いたします
逃げ面摩耗(側面)VB
安定切削されているならば、この部分を気にすればほぼ大丈夫です。
交換時期については明確な基準は定まっていないので、経験から導き出しましょう。
現場メモ📋
私は、逃げ面摩耗の交換時期はVBが
仕上げチップで0.1~0.2㎜程度
荒取りチップではだいたい0.5㎜~0.7㎜くらいで交換いたします。
すくい面摩耗
言葉通り、すくい面の摩耗を指します。幅を(KB)深さを(KT)
現場メモ📋
すくい面摩耗は切削速度が速い時に摩耗が激しくなります。
溶着摩耗
チップに溶着して起こる現象です。観察するとチップに溶着物が付きます。
現場メモ📋
切削速度を上げ刃先温度を上げて溶着を無くすことです
境界摩耗
加工硬化を起こしていると、起こりやすい現象です
現場メモ📋
ステンレスや耐熱合金の削りはじめによく見られます。切れ刃角を大きくすると良好になります
チッピング
刃先の衝撃が大きいと欠けてしまいます
対策として靭性が優れているチップにします。
現場メモ📋
靭性が優れているチップの例(ミツビシマテリアル)
まず使っているチップの型式のコーティングの部分を見て下さい
UE6105<UE6110<UE6115
といった具合に下2桁の数字が大きい程、靭性があります(断続向き)
切削速度と工具寿命(テーラーの法則)
チップ寿命時間(T)と切削速度(V)
Cとnは定数で工具材質、加工物材質(切削速度以外)それぞれの条件で決まる。
加工時は基本的に工具材質、加工物材質は変わらないので切削速度とチップ寿命の関係を知ることができる
(1)の式を書き直すと
となる
被削材によるnの値は0.2~0.4くらい
工具の材質によるnの値は超硬で0.2~0.3
加工中は被削材、工具の材質は変わらないので切削速度の値で工具寿命(T)を求めることが出来る
例)
超硬の場合nの値は0.2
上式に代入しますとα=5
Cはコンスタント(一定)なので
切削速度を10%あげると
T=1/1.1^5≒0.62・・・・①
切削速度(V)を10%あげると工具寿命(T)は38%短くなります
いちいちそんな計算面倒ですよ
実は簡単な方法を考えました。以下で説明いたします。
切削速度と工具寿命を簡単に計算する方法
工具材種から考える
テーラーの法則は逃げ面摩耗(側面)0.3㎜になるまでを工具寿命としている
15分間で寿命に達するまでの切削速度を基本速度としている
メーカーのカタログ値はテーラーの法則を元に考えられていると思われます。
工具メーカーはこの方程式を元に算出しているので、表1の15分が1.0で基準となります
【出典:三菱マテリアル TOOL NAVI】
例)UE6105(工具材種)の場合
推奨切削速度が200m/minの場合
30分工具を持たせようとすると
200×0.79=158m/min の切削速度で削ると理論上大丈夫です
そのほかM種、K種についても同様です。
【出典:三菱マテリアル TOOL NAVI】
【出典:三菱マテリアル TOOL NAVI】
被削材の硬度について考える
被削材の硬度が高いと刃先の温度が上がるので切削速度は大変影響があります
被削材についてもテーラーの法則は有効です
工具の材種のnと被削材のnの違いで計算式から同じ考え方で問題ないです
下の表から硬度180HBの材質の時の15分寿命です
【出典:三菱マテリアル TOOL NAVI】
上の表からも被削材の柔らかいほうのが切削速度を上げることが理解出来る。
送りを考える
工具寿命を考えた場合、送り量と切削速度は相関関係があります。
- 送りを上げたら切削速度を下げる
- 送りを下げたら切削速度を上げる
切込み量を考える
切削条件の中で一番影響が少ない
切削抵抗は増えるので機械の負荷は大きくなるので
オーバーライドなどを確認して機械の負荷を注視
まとめ
工具寿命について
- 切削速度の増減はテーラーの法則で工具寿命を予測することが出来る
- 送りを考える場合、工具寿命の維持には送りを上げたら切削速度を下げる、送りを下げたら切削速度を上げる
- 切り込みを増やしても工具寿命には影響は軽微で、機械の負荷を注意する
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